1991 Breezer Lightning

実測車重 9.9kg
当時価格 \224,000(日本と世界の自転車マウンテンバイク1991より)

Overview

年式合わせの希少パーツやリッチー部品を強く意識したアレンジです。9速化は新車から数年経過後に最新へ転装した想定の創作物語。幅広ライズバーは往年のクランカースタイルをモチーフ、ブラウンヌバックのサドルと生ゴム風グリップでアクセント、意趣ある金色パーツに含みを持たせ、あのゴールデン時代を演出しました。
 

Impression

軽い、すべての方向に動きが軽く質量を感じない。実測9.9kgと確かに裏付けはあるが体感としてそれよりもさらに軽快。フロントは接地感の無さと勘違いしてドキッとするほど。ハンドル幅が広く重心が高いセッティングもひとつの理由ではあるが、ただそれだけではここまでのマス抵抗の無さは得られないだろう。勿論漕ぎも軽い。
そして柔らかい。フレームがサスペンションである。ショックの吸収性やそのバネ感など今まで経験したことのないストロークレベルに達する。実際フロントの「たわみ」も目視で測れるほどに大きく不適切な操作ではブレーキウォブルが出る。ただしこれは短所ではなく扱い方の問題。
そもそもサスペンション否定論から始まった☆RiGiD GARAGE☆であるが、ここまでマシンが説得力を持つとは驚きであり当ガレージの代表車として遜色無しである。
細みフレームの見た目やクラシックな色合い、生い立ち、ヒストリーにもたいへん魅力あるBreezerだが、「軽さ」と「柔らかさ」という本質的な性能をここまで兼ね備えていたとはウェルカムな想定外。MTBの理想形モデルとして知っておくべき重要事項をしっかりと内包している。
    
リッチーロゴの刻まれたブレーキやレバー類も形状として素敵だがその操作性も秀逸。カンチブレーキはセッティング次第で様々なフィーリングを演出できるがそれ以前の段階、部品の機能として優れた感覚性能があり、アタリ感、反発力の仕上がりがたいへん気持ちいい。操縦感覚を感情的に楽しめる部品はそう簡単には出会わない。
☆RiGiD GARAGE☆の活動理念通り、後世に残し伝えるべき真実を、動態としてその内側に秘めたまるで生き物のような有機物体である。これは手放す気持ちにはなれない。

Appendix 200703

フレームナンバーの左から2桁目が西暦4桁の末尾である旨の情報を発見した。さらに1994年からはアヘッドの採用(この車両は1インチのスレッド)。よってこの車両は1991年式で間違いないだろう。以前から海外サイトの調査を勧められていたがようやく答えに辿り着くことができた。シックな色合いでカスタムしたがその通りに当ガレージ最年長の風格で納まっている。

Appendix

<200925>
年式が正確に判明した91年型ブリーザーと、90年代後期のディレイラーRD-M750(9s)の組み合わせでは「2世代飛び」であり、ややモダンすぎるので再考を試みた。手持ちパーツの中からRD-M739(8s)をピックアップ。これならすぐ次の中期世代、時代背景の収まりよく簡素な造形もよく似合う。さて8sのカセットとシフターはどこかにあったかな?と記憶を辿る。
いやまてよ、、、、
ふと思い立ったことが8速時代のルックスで9速化は出来ないだろうか?と。カセットの総幅は8も9も一緒だからディレイラーの動く幅も一緒のはず、チェンジの位置決めはシフターに依存、であれば9速のカセット&シフターでRD-M739を操作出来る。さらに他車から取り外したワイドレシオ(12-34)の9sカセットもある。フロントシングルにはうってつけだ。いいねえ!これで行こう。
実行に移すのはいつになるか、身の回りが落ち着いた穏やかな休日がいい。ストーリー完結までの思いを馳せながらその日を待つ。

 

<201010> シフターの表示部撤去
シンプルなハンドル回りを狙い9速シフターSL-M750からインジケーター部を切除。「隠れ9s」の構想に従いXTロゴのアピールは退いていただく。加工する部分は他の部品取りから調達し用心深くNP保管。内部のメカを解体し、不要部をサンダーで削り落とし、カット面をリューターで仕上げる。空洞となる部分には黒のコーキング剤を注入して密閉。取り付け状態ではハンドルに隠れるのであまり仕上げはせずシールド機能だけ考慮の突貫1hワーク。

左が部品取りと残骸、右が完成品とノーマルパーツ保管、いつでも元に戻せる保険付き。

 

<201018>
  
完成と試乗は天候都合で翌週となった。動作は完璧で変速にまったく問題無し。レバーの動きも軽くスパスパと決まる。節度ある気持ちのいい操作感で従来よりも大幅にフィーリング向上、シフトチェンジが楽しく必要以上に変速回数が増える。SL-M750は私好みのタイプだ。速度レンジも期待通りにワイド化され申し分なし。年式を超えるチューニングアップと年式を崇めるクラシックルックの融合である。
◆Derailleur : RD-M739
◆Cassette : CS-M750 12-34t
◆Shift lever : SL-M750 "Remove the indicator"

 

Appendix 201125

シフトの向上に伴い車体全体のイメージやその存在感にも厚みが増し、感覚的な乗車フィーリングにも新しい発見があった。
タイヤの空気圧はやや抜けてきたところがベストマッチ、正確な計測はしていないが2.5〜3キロぐらいだろう。高圧タイヤでショック吸収性を車体に依存するよりも全体バランスとして「しなやかさ」を組み合わせるほうがいい。モーターサイクルでも同様で70〜80年代のよくたわむフレームには現代パーツの足では合わず、細いフロントフォークやバイアスタイヤでバランスを取り調和させる。あとはその特徴をどう解釈するか乗り手の問題、理解力が試される。サスのストロークを意識するのではなく車体全体で柔らかに去(い)なす感覚。
同様にブレーキも硬質な感じが無く穏やかさで合致。RM-395リムとXTシューのマッチングが素晴らしく、最大性能は低めだが握るほど絶妙に立ち上がる制動力、シューの当たり感が温和でたいへん気持ちいい。ARAYAとSHIMANOはどちらかがこの組み合わせを意識して開発したのではなかろうか?いや、これに限らず全ての開発にターゲットとする相手があるだろう。それを推測し適正な組み合わせを求めていく過程こそがオールドMTBの趣味性、当時に思いを馳せる「夢想」は今後も似たように出現するはずだ。フレーム単体から出発した91 Breezer Lightning、完成へのゴールは無い。

Appendix 230106

トップ画像を更新、いくつかの小変更を経た現在の状態を掲示する。特にクランク周りの見栄えを求めたBB交換についてはテクニカルノートとして以下に記述しておきたい。

フロントシングルギヤの取付け位置をスパイダーの外側へ移動するために大掛かりな実験を試みた。チェーンラインの適正化には軸長の短いBBを用いてクランク全体を極力内側へ追い込むが、左クランク先端とチェーンステーが先に干渉してしまい右が寄せられない。フレームに対してのクリアランスが左右非対称で異なるのだ。この問題の解決に奇策を思いつき実験を試みた。それは68mmのボトムに73mmのシェルを用いてスペーサー調整を組み合わせる作戦。合計5mmのシムセットをどちらにどれだけ入れるかで片側寄せとするのだ。BB は68-122から73-115へ交換し、シムを右に1mm入れて残りを左へ、これで右3mm左3.5mmのクリアランスとなり予想通りの結果が得られた。極めて微小な偏りなので機能上の支障は特に無し、ペダル位置も乗り手が感じるほどの変化はない。良い結果が得られて気持ちよく落着した。
が、非対称であった根本原因は未決、臭いものに蓋をしたようにも思われるが課題を残したまま未来へ進むのもアリだ。サスティナブルな趣味性の「お楽しみToDo」をガレージに貯蓄してお宝とする。

Appendix 230703

ステム交換 ノーブランド100mm25度からNL製110mm15度へチェンジ。寸法の変更と差し込みを深くして極度にアップライトだった姿勢を標準的なライザースタイルへと更新した。重量は415gから355gへマイナス60gの軽量化。おそらく車両と同年代でヤレ感も良好にマッチング。点サビが浮いていたのでワイヤーブラシとクリーナーで磨き落とし鈍艶での演出で調和を得る。

乗車ポジション、特に前傾具合は車体の操縦性にとても大きく影響する。設計通りのポジションで乗るのが正解であり無暗に変えるとバランスが崩れると言うことだ。それを承知で乗るのと解らず気づかず乗るでは大違い、MTBを深く探究するのであれば後者ではない。前傾姿勢の重要性は過去DUCATI MONSTERのハンドルを変えた時に会得している。ツーリング用にとアップハンドルを取り付けたがコーナーではとても怖い思いをし、乗り方をどう工夫しても解決せず元の純正に戻して意味を知ることになったのだ。今回のBreezerポジション変更で二輪車全てまったく同じであることを理解した。
ハンドルは遠い位置に移動、しかし車体全体が小さくなったフィーリング。操縦に安心感と自由度が増して荒れた路面やタイトなターンでも激しく振り回せるようになった。車体の中心「=重心」に頭が位置することが大事、全体俯瞰が得やすくコンパクトな凝縮感で全ての操作がバランスする。この程度の前傾であれば景色や空もよく見えて失うものは何もない。初期の試乗で記述したネガティブな軽さ「接地感の無さ」も消えて長所利点だけが大きく引き出された。
この状態がBreezer本来の素質であろう。フレーム単体で購入し組立初期から固定されていたアップライトポジションにはこんなに濃い伸びしろが隠れていたのだ。深い探求余地を発見し大成功のチューニングアップで完結。ステム1本から得られた大きな価値、値打、活動の記録として誇れるアップデートとなった。

 

Specifications

Frame Breezer Lightning /1991 / H1EO 0771
Headset
Bar Answer PRO TAPER EASTON
Stem 100mm, 25d

110mm, 15d (2023.07〜)

BB SHIMANO
Crank Ritchey
Rings 36t
Rear Derailleur

SHIMANO RD-M750
SHIMANO RD-M739(2020.10〜)

Front Derailleur
Shift levers

SHIMANO LX
SHIMANO SL-M750 "Remove the indicator”(2020.10〜)

Brake Set Ritchey / SHIMANO XT Shoes
Brake levers Ritchey
Front Hub SHIMANO XTR 900
Rear Hub SHIMANO XTR 900
Rims ARAYA RM-395 Team
Tires

IRC SERAC XC 26×1.95
IRC MYTHOS XC 26×1.95(2020.04〜)

Seat Post Ritchey
Saddle Selle san marco Rolls
Pedals MKS PROMENADE

 


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