1995 StumpJumper

stump jumper 1995

実測車重 11.1kg
当時価格 \119,000

 stump jumper stage-1 STAGE-1 (初期仕様)

 

 stump jumper stage-2 STAGE-2  20.11.02 (赤の差し色で90's切削パーツに転装)

 

 stump jumper stage-3 STAGE-3  21.07.27 (本物80's SPECIALIZEDライザーバーに転装)

Overview (STAGE-1)

入庫時はたいへん残念な状態であったジャンク車両、しかしレストアを開始すると好転しポジティブに化けた。当初は汚れをアートとみたラット仕様を予定したが一皮むけば塗装の不自然な退色退艶がなく全体均等のやれ具合、さらに磨くほどに鈍く柔らかなルックスとなりヴィンテージの演出にはとてもリアルな味が隠されていた。

ロゴの剥がれ具合もそれらしい雰囲気を醸(かも)し出しており、方向性を改めながら組み上げるパーツを熟考する。テーマとしては「年式合わせ」+「グレード合わせ」+「ヤレ感合わせ」。当時の上級パーツを選び、新品ではなく「使い込まれて」「磨かれて」「すり減った」ものが全体に溶け込む収まりとなる。ヘッドパーツとBBは部品まるごと交換、ハブベアリングの分解OH、全ての回転部分を一新することでハイエンドな実態性能に引き上げ、見た目を裏切る「羊皮オオカミ」にてコンプリート。使い込まれたリアルクラシックな演出と機能面の完全仕上げ、見た目と乗り味の両方を整えることで単なるパーツの集合体を超えてゆく。何かを宿すための重要な工程があり存在感や愛着と言われるような感覚的スペックへの影響は大きい。
最後にコスト合わせ。手持ちの余り部品を流用して突出した出費なく高バランスを得る。それでややミスマッチとなった部分はあえて未完成の状態として自分への仕掛けをインストール。これで終了ではなくこれからの未来ヴィジョンが自動的に湧き出す仕組みとする。

Impression

優しい気分になれる低速充実の幸せオールドスクール。
  
柔らかなサンマルコRolls、スポンジグリップ、ライザーハンドル、乗車中は終始穏やかに周りの景色や空気を感じることができる。このマシンから得られるものは大切な時間と空間。そうだ、これこそが自転車に乗る本来の目的だった。子供の頃すべてが無条件に楽しかったあのフィーリングだ。しかしマシンが遅いわけではなく守備範囲は高速域まで不都合ない。全個所OHにより回転抵抗の軽さではむしろ群を抜く。それに加えて「スピードを出さない心地よさ」を併せ持ちヴィンテージの素質を申し分なく抽出することが出来ている。その大きな要因はアップライトポジションとなる独特な形状のハンドルバー。握り部分にシボリ角度のあるライズバーを前へ倒して装着するとエンドが上を向いたクランカールックとなる。初代Stump Jumper 1981からのインスパイア。

MTBの祖であるジョーブリーズのクランカーは語源としては「ガラクタ」。見た目だけをレプリカするのではなくガラクタ集めから組立〜フルチューニングに至る「クランカーエクスペリエンス」をこの車両で実行となった。当時の「遊び」も決して新品部品を使わなかったであろうしルックスよりも絶対性能必至であったはずだ。ひとつの役目を終えたパーツに次のミッションを吹き込む作業は私も大好きである。そして機能上のトップエンドパッケージに到達すればこれ以上の達成感、充実感は他では得られない。ローコストであっても価値のあるとても重要な意味を持たせることができる。
いじって楽しく漕ぐだけでも楽しい。これはStump Jumperの本能的な性格が引き寄せた全体結果なのかもしれない。

Appendix

HUTCHINSON BULLDOG AIRLITEへとタイヤ交換。車体によく似合う細幅1.85サイズ。エアボリュームが少ないにも関わらず他のタイヤでは拒絶されるような極低圧で使える。進む方向へのグリップ感、食い付きが強調され気持ちのいい蹴り出しフィーリングが得られる。「返し」が強くフレームのグレードがワンランク上がったような印象。セルフステアもナチュラルのまま横方向のヨレも出ない。通常のタイヤであればこれで低圧NGとなるところだが不思議な限界パフォーマンスを持つ。四角いブロックパターンは舗装路で唸るようなノイズを出すが、それはそういうものでありマイナス評価にはしない。
入手困難な価値ある希少パーツが自然と集まる。その縁に感謝。

Appendix 20.07.31

HANDMADE IN JAPANの表記がある95スタンプジャンパー、当時を知る自転車屋H君によると、「日本でスペシャライズドのフレームを手掛けていたのはシンノムラ(表記不明)、後のJ.I.PARK」と教授いただいた。世界から頼られたトップレベルの技術がこの国にあったのだ。誇らしいストーリーが付加価値を高める。

Specifications

Frame SPECIALIZED StumpJumper / 1995 / 950165
Headset FSA ORBIT MX

TANGE Technoglide (2021.09.05〜)

Bar NITTO B802

Answer Pro Taper (2020.11.02〜)
SPECIALIZED X-1+2 (2021.07.27〜)

Stem TITEC 75mm
BB SHIMANO
Crank SHIMANO XT 737
Rings RACEFACE 34t with MRP
Rear Derailleur SHIMANO XT RD-M739
Front Derailleur
Shift levers SHIMANO ULTEGRA 8s with converter

SHIMANO SL-R440 (2020.11.02〜)
SRAM Attack 9s (2020.12.13〜)
SunRace M90 (2020.07.27〜)

Brake Set SHIMANO LX

Gravity research Pipe dreams (2020.11.02〜)

Brake levers SHIMANO XTR(※)

Grafton (2020.11.02〜)

Front Hub SHIMANO XT HB-M738
Rear Hub SHIMANO XT FH-M737
Rims MAVIC X517

MAVIC 217 Sunset (2020.11.02〜)

Tires HUTCHINSON BULLDOG AIRLITE 26×1.85
Seat Post Syncros
Saddle Selle san marco Rolls
Pedals VP-515A

Technical notes

(※)ブレーキと8sシフターが一体となった素敵なXTR ST-M900、しかし入庫時はシフター部分が折り取られた無残な姿であった。鋭利に突き出た残骸を削り取り、周囲の形状に合わせた曲面を出し、研磨、タッチアップ。900番XTRのブレーキレバー単体バージョンへと変容を遂げる。手間を惜しまず没頭することが大事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1995 StumpJumper (STAGE-2)


<Appendix 201102> パーツやテーマの見直しをしてSTAGE-2へと進化

Bar Answer ProTaper Gold
Shift levers

SHIMANO SL-R440 8s (2020.11.02〜2020.12.13)
SRAM Attack 9s (2020.12.13〜)

Brake Set Gravity research Pipe dreams
Brake levers Grafton
Rims MAVIC 217 Sunset
Pedals VP-515A Bronze (2020.12.13〜)

Overview STAGE-2

さあ!次のDreamを創作しよう。たったひとつのパーツをきっかけにして全体テーマを再構築、新しいストーリーへと進む。
今まで懐古的なパーツ構成であった「リアルオールド」は時代背景を考慮しながら前衛的なアメリカン切削パーツへと転装。赤の差し色を主題とし、しかしシバリ無く緩めのパッケージ、潤沢な遊び心と自由な思想表現を90’sアメリカンカルチャーに重ね合わせる。
    
ブレーキはGravity ResearchPipe Dreams、90’sを象徴するシンプルな円柱造形とそのネーミングが魅力的。これを入手したことで全体が動き出す。レバーは手持ち部品「赤いGrafton」で合わせる。壁掛けで長く過したがやっと出番が回って来た。ハンドルバーは金色(!)Answerでこちらもストックものからピックアップ。特殊なサンセットカラーのMavic217ホイールは使い込まれて減りも多いがヤレ具合としてはちょうどいい。ハブはOHして完璧状態。ここは古くてもXT以上であれば心配なく丁寧な整備で必ず復活する。
   

 

    
レアーな90’sパーツが多数装備され存在感が大きく上昇したが、しかし従来のSTAGE-1仕様も味わい深く捨てがたい。いつでも戻せるように、気分でチェンジできるように、2バージョン可変のマシンと定義させることで落ち着きを得る。

Impression STAGE-2

ブレーキの操作性がたいへん素晴らしい。アソビの部分は極めて軽くワイヤーやスプリングの抵抗を感じない。剛性もあり無理な軽量化ではなくしっかりとした手ごたえで機能する。

そしてシューが当たってからの、その先が秀逸。ある程度の引きしろがあって制動力がとてもリニアに立ち上がる。決してスポンジーではなく意味を持った長めのストロークで豊かなフィーリングが上昇しながら最大力へと到達する。このような中間特性の良いカンチブレーキは今まで経験がない。リムとシューはすり減った使い回しのため当たりが付くまでの長期ナラシを予想した。がしかし、すぐに求める性能が出てしまったのだ。明らかにブレーキとレバーの評価である。これはいい!
シューの調整もシンプルに解りやすく使いやすい。リムに対して上下の首ふり角度は機能がなくパイプのハの字具合で角度合わせをしてシューの突出しが確定する。やってみると特に不都合無くこれはこれでOK。左右のバランスも短時間で完璧に仕上がる。セッティングの早いパーツはXTRなど他にもあるが、この年代でこれほどよく出来たヴィンテージはまれである。良い部品に出会った感激の完成度!しばらくは乗る機会が増えるだろう。
楽しい気分のオールドスクール感覚は前作から同様に引き継ぎ、さらに価値ある希少パーツと自由奔放ルック。この時代の音楽やファッションにも通じるカルチャーエクスペリエンス。いつもの通勤路に「場所と時代錯誤」の鮮やかな空気が舞う。錯覚があっていい。FM局やVWこそ無いが、あのレコードジャケットのように雅な光の中をこれで駆け抜けることにしよう。日差しや風に色彩が見える!これが私のDreamsだ。

 

Appendix 201213

9速へ改新。ディレイラーは8速用のそのままで、シフター、カセット、チェーンを交換。8s時代のRD-M739を用いた9s化は91Breezerで実証済み。レバーはシフトアップもダウンも親指で押す仕組みのSRAM Attack(シマノ互換)、短かく軽くスパスパと決まり気持ちがよい。操作系のアップデートは乗車フィーリングが大きく向上して全体イメージにも好印象、「今日もこれで行こう」と使用頻度が高まる。ブロンズ色のペダルは古風に筆塗りで。靴底のスレで早期に「オールド熟成」を期待。
1995 スタンプジャンパー スタンプジャンパー クロモリ スタンプジャンパー オールドMTB
幅広のライザーバーではライディングに自由度があって思い切った大胆な操作で振り回せる。乗り方や使い道にも広がりを見せ、枠を超えた楽しさがさらに付帯された。ポジションは現代的であるが車体の性格には合っており、思想や目的での合致、方向性の一致がとても自然に感じる。年式合わせに固着するよりもこちらのほうに「調和」を発見した次第。
画像のシフター位置はハンドルバーの両側先端を握るためのセッティングである。モーターサイクルレースから習得したこのスタイルでブレーキは人差し指1本掛け。SRAM Attackを用いるとレバーが近い位置になりすべての操作で持ち替え不要となる。シマノのブレーキシフター一体型では持ち替えが必要で、シフト操作が多くなる上りは内側を握り、下りでは外側に持ち替えブレーキレバーを先端で操作する。特に不都合と言うことではなく乗り方使い方で合わせればそれでよい。

 

 

rigid garage 90's mtb classics

 

 

1995 StumpJumper (STAGE-3)

 stump jumper vintage mtb
<Appendix 210727> 本物80's SPECIALIZEDライザーバーに転装

Bar SPECIALIZED X-1+2
Shift levers

SunRace M90

Overview STAGE-3

STAGE-1とSTAGE-2の混成仕様となるがハンドルはSPECIALIZEDロゴの入った当時ものライザーバーとなり「本物」に昇格した。クランプ部がBMXサイズの22.2mm、立ち上がり(曲げ)までの幅がやや広く、握り部分は手前にシボリ角度が付くのが年代的特徴。STAGE-1で取り付けたNITTO B802と並べると立ち上がったところまでは同寸法でシボリ角度のみが異なる。
specialized vintage rizer bar specialized old mtb
重量を比べてみると本物が450g、B802が375g、肉厚の割には大差ない。性能としては後者優位だが希少性や文化歴史を重んじて本物をリスペクトすることにした。フレーム年式よりも古いパーツを用いたチューニングアップ(ダウン)となり、エンドキャップも「1981」同様に赤で合わせた。この新品エンドキャップは超々希少!2度と入手できないであろう。
ハンドルバーだけでこれほどの肉厚となると、他の部分や車体全体での重量は如何ほどであったのだろう。軽量で気軽な「1995」に乗車しながら「1981」に思いを馳せる。年式合わせに固着しないで自由なカスタムに進んだが全体的にはいい雰囲気だ。意図的なハズしはあるが「ノリ」はいい。突出したミスマッチや違和感がなく作品としての仕上がりに満足度が高い。
old stump jumper

Impression STAGE-3

80’sルックをイメージして、ハンドルの上に装着するサムシフターSunRace M90を試し調達してみた。先入観があり期待してはいなかったが意外にも品質は高かった。節度ある確実な変速とラチェットの操作フィーリングが好感。アジャスターが付いていないタイプだがRD側の調整だけできっちり決まるので手元の微調整が不要、それだけ出来がいいのである。形状も都合よく収まり、グリップ、ブレーキレバー、チェンジレバーの三点関係が過去ベストな状態に落ち着いた。
sunrace m90 old mtb sunrace m90 vintage mtb 1995 specialized old mtb
懸念していたハンドルの重量増、特に車体中心から遠いところの重しはネガティブな要因であるがそれに起因する変化は(私のレベルでは)特に感じなかった。元来備わっていた「穏やか感」にはよくマッチしているようでポジティブにチューニング「アップ」と解釈できる。
StumpJumperはそもそも特別な軽量車ではなくレーシングバイクのようにギリギリ設計はされていない。軽量化のテーマはそれが得意な他車に譲ることにして、このマシン固有の長所利点を掘り出して味わうことにしよう。乗る頻度が高いので直観的に何か魅かれる要素があるのだと思う。よく解からないが好きなタイプ、ここ大事。
vintage stump jumper

 

90's old mtb

 

Appendix 210906

手持ち部品で済ませていたヘッドセットをリニューアル。3台の車両で入れ替えを行ない各車それぞれのテーマに合わせる。
old stump jumper スタンプジャンパー 1995 Stump Jumper 1995 Specialized Stump Jumper 95
この95 SJに新規装着したヘッドセットはCannondale Bad Boy 2003 からの取り外し品TANGE Technoglide。従来のものと同様に密封ベアリングタイプだが機能とは裏腹にオーソドックスな見た目がいい。ややモダンな印象だった白いFSAはクリーニングをして他の車両に合わせる予定。Bad Boyには同じFSA ORBIT MXのブラックカラーを新規調達。黒をテーマにした車両製作を進行中である。
密封ベアリングのヘッドセットは仕事が早くすぐに良いセッティングが出る。「イニシャルトルクがどうのこうの」と言うような趣味性は無くとにかく結果到達へShort & Easy! 生業(なりわい)としてのスピードワークには最適だろう。趣味で楽しむにはあっさりとしすぎて物足りなさもあり、腕が上がったような錯覚もありの一長一短。今日一日終わってみて何台の整備を完了したか?と考えると充実感は大きい。どんな状況をも楽しめるように思考の切り替えスイッチをShort & Easyにしておきたい。

 

 

 


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