1994 KLEIN Adroit
実測車重 | 9.2kg(2022.11〜) |
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当時価格 | \407,000(フレーム/フォーク/バー, ステム 日本と世界のマウンテンバイク95より) |
Overview
プレトレック×ハイエンドモデル×ミントコンディションの三拍子揃ったAdroitです。客観的に最も認められるコレクターズ車両。ヴィンテージMTBは海外に収集家が多くそこで確立したポジションが形成されていますので安定価値と所有意義の大きさがたいへん魅力的。
このAdroitには、素性、経歴について確かな情報が付帯されています。初代オーナーから直接ヒヤリングした証言「BMXリオで購入したとき黒のGaryサイン入りもあったんだ」と言う事実は95カタログにもその通りに並んで20th Anniversaryモデルが存在する。カラーは「Painted Desert」、アリゾナ州のペインテッド砂漠がイメージされ、反射の角度によって透過する赤から土色系への変容が絶妙。ゴールドロゴも相まって少し落ち着いた雰囲気を醸し出し、既出94Fervorのキャンディレッド×白ロゴよりもクラシック感が強い。FS(フレーム+フォーク)をベースに900番XTR やアメリカン切削パーツを組み合わせ、その後カーボンパーツへの転装を経て「床の間バイク」へ昇華したとのこと。RiGiD GARAGEではその初期新車状態を想定し当時ものXTRでの再セットアップを実施。MTBが最も繁栄していた原点へのリスペクトであり、それを直接経験されてきた前オーナーへの敬意も含め、それらの営み、文化、歴史としての価値をこの車両にインストールしました。
現車は可動部が最良状態にあり「慣らし後〜劣化前」のベストを維持しています。リスクのある無駄なOHはせずこのままで良。XTR戻しとクリーニング、消耗劣化パーツの交換のみ。
Impression(初期仕様)
道具や消耗品としてではなく伴侶としての永い歩みを共にする十分な理由がある。KLEIN以外のアルミバイクでそれを持つ車両にはあいにく出会ったことがない。
完成車重は9.6kg。軽さ、柔らかさ、静けさ。雑念がなく静寂、一体感の中で己が研ぎ澄まされてゆくその感覚は精神性の境地に向かうマインドフルネスの様。Fervorのインプレでも触れたがノイズの無さはさらに格別で他のMTBには無いとてもクリアで深い領域へと浸透する。フルリジッドながら路面からの振動や衝撃が極少、不快な共鳴なく平穏のまま何事も起らずにその先へと通過する。サスペンションバイクよりも滑らか、そんなあり得ない事実が体験として後方へ過ぎ去って行く。
“ドライ&クール”なアルミフレームでここまでのしっとり感、包容力はまず他に無いだろう。不安なく全てを預けていけるパートナー、信頼の大きさと強さが際立つ。性格としての穏やかさと優しさが「人柄」のように擬人的。鋭利な神経質タイプとは無縁で協調するためのバイアス補正が不要となる。マシンから発するシグナルは情報量としては少なめ、しかし大切な事項だけが選別されてシンプルにショートに会話するような高度領域。無配慮に全てをツイートされるのではなく、適切な判断、決断が実行された後の事後報告のような効率性がある。つまりノイズ(雑音)が無い、イコール、ライダーへの仕事負担が減少する。
そのように突出した高性能ながらもクセがなく代替されるマイナス要因がまったく見当たらない。太めミシュランもとてもマッチしており相性抜群。この「MICHELIN Country Dry2」はナチュラルハンドリングでエアー加減での特性変動も少ない。幅広く使えるため他のマシンにも数多く組み合わせてきたが、その中でもナンバーワンの相性。最もKLEINカタログモデルでは当時としては極太2.35幅のDeath Gripが装備されていた。
一方、フルXTRで組み上げた優位性は、その素晴らしい造形や操作性だけではない。煮詰めのセッティングが一発で決まるところがたいへん優秀。エンジニアリングとして目的への到達が早い。製造精度が問われるような先端作業でも確かなフィードバックがあり、他の複合要素、歪みや経年劣化があったとしても切り分けて判断が付けられる。メカニックにとってはいじって楽しい大変価値のある性能を持つ。こちらの組み合わせも実直な理由を持ってマシンに正しいと公言できる。設計開発の意図、ステージレベルが双方で合致することを教示された素晴らしいエクスペリエンス。KLEIN×XTRは定石と言い切る。
当ガレージトップの座となるKLEIN Adroit、はたしてその乗車フィーリングも他の追従無くトップであった。特に印象的な「しっとり感」は他の車両では一切形容されない。それほどまでに独自のものがあり、所有者だけが知るオンリーワンの世界、孤高の別次元があることを認識することができた。
褒めちぎりとなった94アドロイトであるが、世界的規模でのコレクター層がなぜあれだけ高い評価を下しているか、その答えを知った。全てに賛同できる真面目な理由と意味があり、その価値とプライスがリンクしていること、おそらく将来に亘って失われることがないしっかりとした本質があることを確認した。クラシックポルシェや60’sフェラーリのように現代でも多くの人を巻き込んでの継続性発展性、文化そのものが栄え続けていくことが、オーナーのひとりとしてとても嬉しい。
Appendix
比較!Attitude×Adroit
上級機アドロイトとアティテュードは見た目同一である。アドロイトのフロントフォークはカタログ上「Strata」と言う名称、そう呼ばないアティテュードと比べるとパイプ径では下端で同一、肩付近で約1mm太くなる。素材の差異は塗装にカバーされて外観上わからない。ダウンチューブは約3mm太く、さらにボトルケージ用ポップナットの周囲に膨らみがあり、これがボロンカーボンを使用した理由によるものかと推測。トップチューブは逆に約1mm細い(1mmは測定誤差や製造交差の範囲かもしれない)。フレーム、フォーク、一体ハンドル+BBでの実測はアティチュードが2.76kg、アドロイトはあいにく未測定、組み上げる楽しみを急ぐあまり失念した。装着部品やタイヤも異なるのでフェアな乗車比較ができない心残。精密計量と同一条件でのインプレは未来ヴィジョンへの落とし込みで継続ミッションとさせていただきました。
Appendix-2 2022.11.04
タイヤ交換
HUTCHINSON Python AIR LIGHT へアップグレード、軽量チューブとペダルもリプレイスして実測車重9.26kgへ更新。ハンドリングは従来品ミシュランとよく似た性格、差異をあまり感じない。フレームの良さKLEINらしさは相変わらずの高いレベルでとても素晴らしい。舗装路でのロードノイズはやや大きくなってマイナス評価、一方プラス面では路面コンタクトのインフォメーションが明らかに高まったことを特筆。タイヤを押し付けて潰している具合の情報が濃く、ストロークの動きとしてはわずか10mm20mmの範囲だが体感する推移幅が大きくクローズアップ、連続的に「見える化」された。イメージとしては強中弱3段階で感じていたレベルが10段階に細分化したフィーリング。浮き砂利への突入で次にどうなるか予想しやすく安全性も高い。荷重移動での工夫がとても興味深く「積極的に使える機能」が増強された。パーツ単体の実測値ではタイヤが1本600→510g、チューブ1本220g→125g、ペダル(ペア)で310→250g、車体全体の計測をしてマイナス0.41kg。この重量削減は乗り味に大きく影響し、特に足回りのダイエットは非常に効果が高いので他の様々なMTBにも適用できる。
Adroitに限らずどのクラインでも最初はフレームサイズで戸惑いがある。トップチューブが長めでステム長も固定、身長に対してはかなり大きいと感じ、しかし実際に乗ればとてもコンパクトであることを発見する。前傾が強ければ肩位置も前へ出てハンドル遠めが合う。フロントタイヤに近い位置で操縦することに大きな意味があり、するとマシン全体の動きが小さく無駄なく収まる。オールテラインではなくハイスピードに特化した車体ディメンション、他車と比べて大きく異なるこの部分をよく乗り込んでしっかりと理解することが正道、知識経験を重ねオールドクラインのオーナーとして適格者であることを望む。
が、実はタイヤ交換まで1年近く乗っていませんでした、すみません。価値あるオールドモデル、仕舞い込まずにたくさん乗ろう、今日もこれで出かけよう。「こうなりたい」が実現するようにバイアス補正の文言を(自戒を込めて)ここに記述しておく。
Specifications
Frame | KLEIN Adroit / 1994 / 19X0594009 |
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Headset | KLEIN AirHead |
Bar | KLEIN MC2 |
Stem | KLEIN MC2 |
BB | KLEIN |
Crank | XTR 900 |
Rings | SUGINO 42-34-26 |
Rear Derailleur | XTR 900 |
Front Derailleur | XTR 900 |
Shift levers | XTR 900 |
Brake Set | XTR 900 |
Brake levers | XTR 900 |
Front Hub | XTR 900 |
Rear Hub | XTR 900 |
Rims | ARAYA RM-400 PRO |
Tires | MICHELIN Country Dry2
HUTCHINSON Python AIR LIGHT 26×2.0 (2022.11〜) |
Seat Post | Thomson
Syncros(2020.05〜) |
Saddle | selle ITALIA FLITE |
Pedals | MKS PROMENADE
MKS COMPACT (2022.11〜) |