1993 TREK 950 SingleTrack

実測車重 10.6kg
当時価格 -----

Overview

とってもアメリカンなTREK 950 SingleTrack、陽気なノリと自由なスピリットを各パーツに思い入れ、再塗装を含むフルレストアにて新車同様に蘇らせました。

カラーリングや各パーツの策定は、さながら60’s空冷ビートルを仕立てるような感覚。ウエストコーストのさわやかな気候が導いたあの時代のVW BugをOld MTBに掛け合わせた。西海岸Lookの改造VWは1980年代にトレンドピークがありベース車両は1960年代のものを多く用いていた。当ガレージの活動も同じように2〜30年前のベース車を用いた旧車再生であり、この共通する時間軸に何か魅かれるヒントがあるのかもしれない。パブリックな廉価車を題材にすることも同様で決して’69 911Sではない。ガレージ保管の週末スペシャルにはしないで雨が降っても躊躇なく乗り出せる手軽さがテーマ。経済性が臭うビックリするような秘蔵品ではなく、ほどほどの骨董観で「道具」を「上手に使う」スタイルが好ましい。当時物パーツで仕上げた普段乗りオールドを現代の買い物の足に使ったらなんと素敵な光景になるだろう。

TREKのフレーム番号には年式情報が無く正確なモデルイヤーが不明だがSystem1フロントフォーク(SPINNER製)のコラムにある1993の刻印から年式を断定した。但しカンチブレーキのアウター受けは94以降の形状、現車の元色(ワインレッド)は英文カタログには記載無しとピタリ合致は得られていない。もう少し調査を深めて情報を更新したい。
       
固着していたBBの取り外しに成功した直後の画像(クリック拡大)。サビ粉と潤滑剤が混ざり合って汚泥のようになったがフレーム側のダメージは一切無し。BBの入るネジ山1本1本を千枚通しで丁寧にクリーニング、シートチューブの上のほうからはまだサビ粉が落ちてくる。こんなに酷い状態でもシートポストの固着が無かったのはチューブ内径が二重になっていた恩恵だ。上部の保持部分だけが27.2で下部は太径!アルミと鉄は接触していなかった。この部分のサビ処理は塗装後にしよう。サンドブラストでの剥離、脱脂後にサビ止めの油分が出てくるとまずい。塗装職人の方に敬意を持ってその作業工程を予見し、外観だけのクリーニングで上村塗装へ発送する。
傷みの激しいヘッドバッジは修繕せずにそのまま貼り戻す。一度は果てた経緯をここに刻み現在までの歩みを示す履歴のエンブレムとした。歴代の輩が見ればそのキズ具合に察しが付くだろう。レストア後の美しい姿にも寓意を含ませ、永いタイムラインへのオマージュを強い接着力で車体へ固定した。

入手したレプリカデカールに用いられていたブルーを差し色としてテーマ性を持たせた。年式的には無節操で幼稚なペイントの車両も多くあった時代であり、そうならないように意識的なバイアス補正で進む。特にブルーアルマイトは緑がかったターコイズ系ではなく濃紺に寄ったもので計画、そしてフレーム塗装が出来上がるまでにまさにぴったりなシートポスト、チェーンリング、ハンドルバーの入手に至る。「こうありたい」と願えばそのように成ることが当ガレージの特徴、あの「引き寄せの法則」はあると思う。意のままでは無いが過去幾度もの経験を振り返れば否定する要因は見当たらない。客観的根拠が無くても活動趣旨の支えにはなっており、とてもありがたく素敵なことだ。
    
さらに色合わせのプーリー、チェーンリングボルト、ワイヤーエンド、年式合わせのXT 737、キラキラ仕上げがアピール度抜群なTNTクランク、、、、シバリの無い自由な策定がとても痛快で愛着心がどんどん増していく。この濃密な時間が最も重要な到達地点でありサスティナブルに連続する中間経過でもある。

後から調べたことだがカリフォルニアスタイルと呼ばれるカルチャーのイメージ色は海や空を連想するブルー、インテリアはホワイト×ブルーにヴィンテージ木材と解説されていた。RiGiD GARAGE製TREK 950も意図せずこのセオリーに収まる。年代や地域性に敬意を持ってリスペクトしていけば同じ空気に触れることが出来るのだ。

開放的な芝庭がよく似合うウエストコーストルックのOld MTB。秋露潤う和の里山に“Shabby”な潮風を求めてみた。

 

 

Technical Experience

フロントシングルはチェーンラインの合わせがシビア、特にこの車両では要求値が高くどちらかに偏るとトップ又はローでカラカラと不適切な音を立てる。BBの軸長選択だけでなくチェーンリングをスパイダーの外に付けるか内に付けるかの組み合わせもあり数通りのBB×取付を繰り返す。最後には荒ワザ、123mmのBBに1mmスペーサーを入れてやや右寄せで仮完成。機能的には全く問題なく1mm程度であれば見た目も操作にも何も不都合はない。この状態でまずはテストライド、坂を下りブレーキの当たり出し、ワイヤーの初期伸び馴らし、変速確認、各部再調整で完成しインプレッションに臨める。

Impression 220928

最上級のハンドリングマシーン、価格を超えた完成度、全体バランスに優れたMTBの基本形。
車重10.6kgは概ね想定内、しかし漕ぎ出しは驚くほど軽く車体がスッと前へ出る。ペダルへの入力がロスなく推進力になり思った以上の加速をする。実測値を超える軽量さを感じるのは前出9900でも触れたとおりでどうやら90’s TREKの固有性能のようだ。
そしてハンドリングは遅すぎないアンダーステアで安定傾向、すぐに馴染んで安心して振り回せる。ビギナーには敷居が低く上級者にも腕が上達したような一体感。直進付近から僅かに舵角が付くあたりで少しクセを感じるが「感じる」だけであって何も起こらない。深い舵角になるほど安定感が増しセルフステアの速度が予想通りに追従して完璧に機能している。高度な理解力が不要、とってもイージー、自転車本来の楽しさが安易に得られていいこと尽くめ、これが「さすがのトレック」である。操縦性は他の高額車を超え最上級と評価していい、さらにこんなにも優しいプライス!完成度の高さが際立つ最高バランスの傑作車
    
太めミシュランのゴロッとしたフィーリングが悪影響では無く味わいとしてポジティブな思考へ展開する指南型な乗り物、低圧にして荒れた路面への喰い付きを求めてもOKだ。低速/高速、市街地/ダート、トリック、アクション、どんな状況でも勝手が良くカタログ通りの「all-terrain performance」=MTBの基本形がここにある。乗り方使い方にも「導き」がありTREKの設計思想、活動理念が素晴らしく高位であってしかもフレンドリー。ミドルレンジと「たかをくくって」いた先入観はたいへん無礼な思考であった。

フロントの動きに優れた要素が多くハンドルの先端(両端)で柔らかさ、ショック吸収性を感じる。いい仕事をしているClub ROOSTのライザーバーがステアリング全体の動きに一体化されてナチュラルに調和している。フレームはバランスが際立つ整合性が特徴、どのパーツへも親和性が高い。クロモリだからと特別な感じはなく各要素がバラバラに突出しないで全部が整ったフィーリング、前後ミシュランの長所利点を引き出して脚色なく明確にタイヤ特性を伝えてくる。エア圧によるダンピング感ストローク感とその跳ね返しがとても心地よく好感的。フレーム自体の主張は少なく、装備パーツのトランスレーター、つなぎ役として密かにすごい仕事をしているのだ。

今回初見聞となるパーツに言及しよう。ChargeBikes SPOONサドルは高い評判通りに偽り無し、とても気に入ったので他のマシンにも推奨。中古のTIOGA SureFoot 7も(今さらながら)良さに気づく、年式にマッチする外観と靴底への喰い付きが優秀。
そしてMachineTech ZEROFLEX、これは絶品!最高の佳作品だ!
    
メカニカルに立ったエッジと緩いアールを組み合わせたプロダクトデザインがお見事。そして見た目通りの高剛性でカッチリとした操作感、ガタや遊びが少なくガサツな硬質感も無い。ワイヤーのセットアップ、調整もスムーズで全てが高次元。品質はXTRレベル × デザインはさらに上!、最上級の称賛を贈ろう。

優れたパーツと乗り味でミックスダウンされた「キュー・ゴー・マル」コンプリート、いつでも乗りたいタイプの「引き寄せられる」自転車である。買い物にも通勤にも自在に使う日常パートナー、当初想定した「普段乗りオールドを現代の買い物の足に…」は正しく現実化し達成された。コンビニ特急としてはオーバークオリティな部品も目立つようになったので盗難犯罪を誘発させないよう持ち主の管理責任をさらに追考する。

Specifications

Frame TREK 950 SingleTrack / 1993 / 1123852
Headset TANGE
Bar Club ROOST GOFAST
Stem KALLOY AL-6009 110mm
BB SHIMANO BB-UN72 73-123
Crank TNT 175mm
Rings SUGINO 36t
Rear Derailleur SHIMANO RD-M737
Front Derailleur
Shift levers SHIMANO SL-M739 8s
Brake Set SHIMANO BR-M737
Brake levers MachineTech ZEROFLEX
Front Hub SHIMANO HB-M738
Rear Hub SHIMANO FH-M737
Rims MAVIC X517
Tires MICHELIN Country dry2 26×2.0
Seat Post ALIEN ALUMINUM 270
Saddle ChargeBikes SPOON
Pedals TIOGA SureFoot 7

 


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