1992 BREEZER Lightning XTR

breezer lightning xtr 1992

実測車重 10.15kg
当時価格 \345,000 (日本と世界の自転車マウンテンバイク1992より)

Overview

納屋モノ化ける!Lightning XTR。新車のように復活した超光沢92ブラッキーのストーリー
shimano xtr

200711

リサイクルショップへ流れてしまった名車BREEZER Lightning XTR、当ガレージで正しく救出を試みました。
車両引取りは隣県への半日旅行、期待感と不安感がミックスされた非日常エクスペリエンスを楽しむ。がしかし帰路はダークな心情へとトーンダウン。ピンボケ画像だけで購入を決めた自己責任、「想定内だ!」自問自答を反復するが残念な気持ちは翌日まで引きずることになる。実車は塗装の艶がまったく無くガサガサのカピカピ、全体に粉(?)のようなものが堆積し素手では触れたくないほど。さらにステッカーの剥がし跡に段差があり、その内側だけに元色が確認できる。これは「やってしまった!」と、、、、、

200712

真実を求めすぐにクリーニングを開始。まずは洗車、そしてステッカー跡を液体コンパウンドで磨いてみる。なんと段差はすぐに消え周囲の艶も出て跡形もなく復活した。他の箇所も一皮剥くだけでツヤツヤの光沢が現れた。これはまさに納屋モノ!バーンファインド!!
「やってしまった!」ポジティブな意味で「やってしまった!」を心で繰り返す。
その剥いた皮は多分固形ワックスだったのだろう。洗車時によく水を弾いていたしステッカー跡も塗装の損傷ではなくその表面でワックスが段を作っていたのだ。まさに全身脱皮、劣化がまったく無いフレッシュな全体容姿が現れた。天然成分の良質なワックスを塗りこんで大事に丁寧に扱われていた当時状況が推測できる。ワックスの層で外界から完全シールドされたまま長期定置され、何らかの事情が変化し、今ここへやってきたのだ。中間経緯は不明だが救出作戦は大成功、名車の引き継ぎ拝受に納まった。
縁に感謝、敬意をもって当時コンディションを再生させていただきます。
breezer lightning xtr 1992

200716

Web上の情報を調べると92年の資料にLightning XTRとLightning Proの2グレードが存在。このXTRモデルと当マシンを比較すると細かなパーツ構成で合致。但しフレーム番号の表記情報に照らし合わせると91年型となる。
91年の資料にもXTRのコンプリートモデルがあるがパーツ構成が少し異なり、フレームロゴはLightningだけでXTRは入らない。興味深いのは92年から発売されたとされる初代XTR 900系パーツが91年にコンプリート車両で掲載されていること。当時の最新パーツへの大きな期待が見て取れる。
old breezer

200723

ライトニングXTR

ヘッドをばらしてフォークを抜くと「TANGE 91.1」が現れる。91年型だ。そして画像参照!驚きの裏側ミントコンディション(クリックで拡大)。当ガレージ最年長でありながら当時の姿のままおよそ20〜30年もの間、誰も触れずにタイムトリップしてきたのだ!遺跡発掘レベルだろう。レストアが進むごとにコトの重大さが明確になってゆく。納屋モノを当時の姿へ再生するか、技術を駆使したレストモッドへ進むか、全てが自らに委ねられている。完成を急ぐな、丁寧に少しずつ、落ち着いて、慎重に、そして楽しめ!
200724

ritchey logic breezer

Ritcheyロゴの入った当時ものサドルも程度良好、これだけでも希少価値!しかし乗り出せば表皮の劣化は早いだろう。撮影だけに使用して日常使用は別のものがいい。以前から保有していたTURBOが合いそうだ。比べてみると外観はそっくりで裏側は別物、きっとRitcheyのほうが「効率的な生産品」なのだろう。性能の格差がなければそれでいい。コストを下げた努力は敬意をもって肯定したい。

そのサドルの裏側には92の刻印!車両年式の完全特定が未完のままだったが、推測するとフレーム等の主要部が91年に製造され、92年から販売開始された900系XTRやこの92サドルなどを用いて翌年に組み上げられたとするのがスムーズ。それでカタログ年式へもつじつまが合う。部品の製造から車両完成に至るまで年を越したとしても不自然ではない。どちらの年式表記にするか戸惑うところだが、これだけ豊富な根拠があることも確かな事実として注視したい。

200726

各パーツを分解して清掃を進める。通常では手が入らない細かな部分に汚れが少ない。車軸の周辺には塗布直後のように半透明なみどり色をしたグリスが残り、チェーンリングも簡単な洗浄で無垢な色合いを取り戻した。スレや減りが無く新品のよう!使用頻度が極端に少なかったのであろう。下手な分解やメンテも回避しているようだ。レストアの手間をかけずにこのままでも乗れそうではあるが、手抜きはせず分解点検と全体把握に努める。

200921

古誌「日本と世界の自転車マウンテンバイク」の91と92を入手、年式調査に終止符を打つ。紙面では91年でLightning、92年でLightning XTRが掲載され、今までの不確かな推測作文を既成事実へと昇級させることが出来た。製造年よりも市場に出て一般に認知された年式のほうが表記としては適切であろう。73カレラRSも72年から製造されており、それでも呼び名はナナサンカレラである。
クロモリ ブリーザー

200926

全箇所の分解OHを終え「下ごしらえ」が整った。泥詰まりは一切ない、サビや腐食もほぼ無くボルト頭のメッキ部をワイヤーブラシで磨き落としたぐらい。修繕も発生していない。シフター内の固着したグリスを洗い流す程度が一番の重作業であった。どのパーツも極上コンディションであり、年式合致、程度合致、カタログ仕様にも合致、全てがパーフェクトに整列。さあここからが最も大切な、最も待ち望んだステージだ。次のガレージワークはいつになるか、、、いい日を選んで没頭したい。
900系XTR vintage

201229

組立を開始。事前準備が整っている段階からのパーツの取付けは僅か1h程度であっけなく終了。この時点では期待したような歓喜は無く次々の作業に本能が自動リンクするだけだ。その後、ワイヤー張りや各部調整で約半日。リムのブレ取りや馴らし走行をして再調整を繰り返す。完全ではない状態だが試乗中に「ああ!いいね、これ」と徐々に評価を意識してくる。
br-m900 xtr br-m900 old mtb breezer 900系XTR ritchey logic

201230 - Pre Impression -

全体的には前出91 Lightningと同様に柔らかさ、軽快さ、スペックには表われない感覚的な気持ちよさを保有し、前傾ポジションに変わっても緊張感や集中力を求められない有機的なおおらかさがとても心地よい。あえて純正そのままに組み上げたことでジョーブリーズの設計思想を十分に学ぶことができた。トムリッチーと共通する部分は確かにあり穏やかなフィーリングがとても印象的。クロモリ素材の「しなり」「強度と軽量化」を熟知し、経験値での直観判断も総動員された結果なのであろう。一方Ritchey P-seriesとは異なる乗車姿勢はBREEZER独自のアイデンティティで、ストイックな競技性能とシバリの無い「ゆるさ」がバランスよく共存した不思議な仕上がりである。
ライトニングXTR 1992 old xtr xtr fh-m900 breezer ritchey logic breezer lightning xtr 1992
車重10.15kgはその通りに動き軽快。フルXTRの評価は他車にも多く作文したので割愛し画像でご覧いただく。数値上あと一歩で一桁台であるがそれを実現するのは容易い。すでにチューニングパーツの用意がありXTRシートポスト(色違い2本)やRitchey W.C.Sハンドルバー、当時もの軽量サドルFliteなどで未来の構想はインストール済み。
xtr rd-m900

 

old mtb

Impression

210103

ポジションはノーマルのままで筆者好みジャストフィット。試乗直後から理想的なセッティングが出ていて安心感があり全体パッケージの纏まりを強く感じる。そしてハンドルからの情報量がとても濃い。タイヤの感触が明確に伝わりギャップや段差でのへこみ具合、荷重移動での潰し具合が手に取るように分かる。事前に準備しておいた空気圧は下限の2.5キロまで下がっていたがこれが好感触で新発見。3キロまで高めると曖昧さが無くなり輪郭のあるダンピング感、たったの0.5キロが実にはっきりと変化してこちらも楽しい。このスイートスポットで行先や用途に応じて使い分けていい。後ろは3.5キロまでOKでモーターサイクルに例えるとプリロードをかけて車高が上がり突っ張ったようなフィーリング、「もっと押し付けろ!」と催促されるような感じ。IRC MYTHOS XCとLightning XTRはどうやらベストマッチの様子。
ハンドリングの安定感も高評価、セルフステアの追従が適切で早くなく遅くなくシビアな気遣いがまったく無用。トレールが長めの設計では?と推測、いつか数値検証を試みたい。リッチーサドルはTURBOよりも柔らかく車体全体の「しなやかさ」に合っている。
breezer ritchey

210106

極寒氷点下の中、いつもの慣れた道、慣れた早朝で再度検証。乗車ポジションがやはり特徴的でカット無し540mmのハンドルバーと短めステムはとてもコンパクトに無理なくライダーを迎え入れる。900番XTRはしっとりと潤いのある操作がとても心地よく、現代パーツの軽薄さとは無縁でこれだけでも楽しさ嬉しさが溢れる。さらにパーツ単体ではなく車体全体での硬質感が皆無、全ての動きが柔軟に滑らか。段差を「タン!」と越えるフィーリングが最高だ。不必要に歩道や縁石に向かってしまう。
そしてそれらの「音」に着目。「カン!」ではなく「コン!」、「カチッ」ではなく「コチッ」。筆者の本職は音響関係、音で表現される質感や空間認識が多くを語ることを特にアピールしたい。単に高級部品を取付けただけでなく全体テーマとしてXTRフィーリングに仕立てられた一体性は、その全てから共鳴する同じ音色で理解できる。トップチューブのXTRロゴがデカールではなく塗装で大切に印字されている意味はそういうことなのだ。
breezer lightning xtr

Complete

オールドクラインのように客観的評価の高い車両も素晴らしいが、主観的「これが好き」度ではトップに着座のBREEZER Lightning XTR。上級パーツの競技品質と気負いの無いまったり感が混在し、絶妙なアナログ感覚で全体構成された完璧パッケージ。いつでもどこでもどんな乗り方使い方もOK。同じクロモリのリッチーPシリーズより敷居が低く、フレンドリーな気軽さと軽量高性能が融合したベストバランスのコンプリート車。「ふだん使いのXTR」この味を知らずして当ガレージの志は語れない。
breezer lightning xtr 92
☆RiGiD GARAGE☆へ入庫した全ての車両の中で最も醜い初期状態であったが、今は最も美しい最上位のポジションに居る。当時の輝きそのままに新車同然の姿を魅せ、そして日常の乗り物として自転車本来の使い方をする。集めたり飾ったりの趣味は私の性分ではない。

Specifications

Frame Breezer Lightning XTR /1992 / H1N008327
Headset Ritchey LOGIC
Bar Ritchey ForceLite
Stem BREEZER 1inch Thread
BB SHIMANO BB-UN91
Crank SHIMANO FC-M900
Rings 46-36-26t
Rear Derailleur SHIMANO RD-M900
Front Derailleur SHIMANO FD-M900
Shift levers SHIMANO ST-M900
Brake Set SHIMANO BR-M900
Brake levers SHIMANO ST-M900
Front Hub SHIMANO HB-M900-F
Rear Hub SHIMANO FH-M900
Rims
Tires IRC MYTHOS XC 26×1.95
Seat Post Ritchey LOGIC
Saddle Ritchey LOGIC
Pedals PD-M737

 

 

old breezer


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