1991 SPECIALIZED RockHopper Comp

実測車重 10.95kg
当時価格 \98,000 (日本と世界の自転車マウンテンバイク1992より)

Overview

オールド感バツグンの91 RockHopper Comp、色合いもバツグンにハイセンス、画像では不明瞭だが2色のグラデーションとなっており前から後ろに向かってパールグレーから青味がかったアイアングレーに変化して同系色での微かな違いを出している。さらにこのロゴである、ダークな背景にダークなパープル!「お見事」としか言いようがない。コントラストが弱く遠目では認識不能、ブランドアピールをあえて抑制し斬新な手法で仕上げた当時のデザイナーに感服!

当ガレージの古参’95 RHerStumpyとは設計が異なり80年代の流れが随所に見られてとても興味深い。全体的に細いパイプで組まれておりヘッドは1インチ、シートポストが26.2mm、トップチューブの傾斜が浅くヘッド位置が低いので前下がりの精悍なイメージ。ブレーキのアウター受けもシートステーをブリッジするオールドルック。ハブやBBに関しては特別な寸法でなく他の90’sと部品共有出来ることがとても好都合。
日本のSPECIALIZEDは1990年から代理店がスタート、MTB ’91カタログ(立風書房)には「今シーズン国内初登場」としてスタンプジャンパー(\128,000)とロックホッパースポーツ(\88,000)の2機種が紹介されている。「Comp」はその上位グレードで翌年のカタログ誌に\98,000で登場。シリーズ全体では後期になるほど廉価版も出てくるが91ではまだ上のほうにポジショニングされており、希少性や文化歴史としての価値がとても大きく感じる。当フレームは国内正規品ではなくアメリカのオレゴン州から個人輸入した個体であり同じ仕様が日本に存在するかは不明。
    
ロゴ合わせの差し色にテーマを持たせて演出、しかし主張の強いパープルだ、変えるのはハンドルバーとスモールパーツにとどめて控え目なピンポイントアクセントを狙った。ペダルはジャンク箱にあった型番不明のWellgoを持ち出しオールド感合わせとした。ボディが樹脂製の廉価品、尖った鉄ケージの食い付きに期待。分解OHを試みるとベアリングの機能にはまったく問題なく「清掃+グリスアップ+玉押しの調整」で軽快な回転へ蘇生。セッティングは少しガタの出る状態でひとつ目のナットを固定し、ふたつ目のナットにトルクをかけてガタが無くなる状態にもってゆく。ガタの出し具合を少しずつ変化させてトライアンドエラーを繰り返すとゴールに至る。高い性能と見た目のヤレ具合が融合したスペシャルパーツの完成。ステムは仮装着、ポジション出るまで数種を試す想定。1インチのクイルステムで長さ角度を絞りこむと選択肢は限りなく少ない。26.2mmのシートポストも同様に激レア、当時もの3tttに出会うまで6カ月の捜索タイム。モノの入手よりも「その時間」を楽しんだほうに大きな体験価値があるだろう。クランクは手持ち品スギノリッチーを加工、スレて消えかかったロゴを磨き落としノーブランドに仕立てる。美しいシルエットの当時ものブレーキレバーもノーブランド、但しこのような市販品は存在しない。裏を見ればトップグレードの刻印!年式としてはピッタリのマッチング(シフターレスに至った経緯はこちら)。そして今回のプロジェクトに向けては外観を整備、サンドブラストと磨きでアルミ色仕上げとした。ツルツルの鏡面までは追い込まずレバー部と同じぐらいの色合いに留めて全体調和を狙う。作業中はよく分からなかったが一息おいて俯瞰的に見てみるとナカナカの鈍艶具合だ!ここで完成とする。
    
カンチブレーキは手持ちパーツを煩雑に混ぜ込んだミックス仕様である。組んでみるとLXのブラックとXTRグレーは相性よくグッドルッキングで機能性能にも遜色無い、これはいいアイデアになったと自画自賛部品。LXグレードはあまり積極的に用いないがこのBR-M565は上級機と同じシルエットが好みで保管していた。ノーマルシューは残念ながら使い物にならなかったのでそこだけ変えれば高品質に化ける。

Impression

年式の古さゆえ他とは異なる強い個性を期待したがいい意味をもって外された。乗り味はとってもスタンダードな標準型、最初から馴染みを感じるフィーリングで少しづつ試すような「探り」が全く不要であった。使い慣れた900番XTRやフルOHのシャキシャキシフターなどでRiGiD GARAGEらしさに収まったのであろう。意外にも軽さを感じハンドリングや車体全体の動きに質量感が少ない。年式合わせの装着パーツは決して軽量部品では無くレスポンスの鈍さや古めかしい作法にも心の準備をしていた。そしてギリギリ10キロ台で仕上がったミドル級RHer、1991年でここまで高度な設計に到達しており「古いMTB」という概念ではない90’s全体を象徴する完成モデルになっていたのだ。オールドKLEINやハンドメイドRitcheyなどとは異なり産業性の高い量産MTBとして庶民目線にも手抜きのないパブリックなマスプロダクト製品、時代検証としても興味深い趣味性がある。

2度目の試乗で固有性の発見に至る。ハンドリングは適度にスローなアンダーステア、どんな速度、舵角でも終始同じフィーリングを維持する安定型。初心者にフレンドリーだが落ち着いた直進性にこちらの気分も同期して高揚感も上がってくる。長い時間の乗車にも居心地良くランドナーのように旅向きの味付けだ。緩くナチュラルで感情訴求な面を持つ、ここに設計年代としての特徴があるのかもしれない、もう少し乗り込めばさらにヒントが現れそう。全体がよく整っていてライダーとの調和性にも高得点、車体の中心「=重心」に自分が居ることを強く感じ「軸」に乗るイメージ。フレーム自体はやや硬い印象があり、それはタイヤで補う手法で解決、太めミシュランを低圧セッティングにしてマッチングが得られる。ダンピング感や跳ね返しがとても好感触、車体全体でのバネ感に統一性が出てきた。気持ちの良い乗車フィーリングを持ったグレードを超える高評価の91 RHer主観的「これが好き」度はかなり高い。

3度目の試乗、後ろのバネ感に意識が引き寄せられる。タイヤから尻に伝わる情報がとても濃く上質、低圧具合をさらに探ると2.5kgではストロークを感じるサスペンション的なリバウンド感が良好、3kgまで上げると引き締まって速く短いダイレクト感、どちらも理解し易く意味のある動きであり、そこを起点にフレーム全体の仕組みが機能することを教授される。どんな二輪車もやはりリヤ主体であり、その重要性依存性を深く体得できる。前出’95の2車種ではここまでの意味を理解することは出来なかった。年式違いによる設計の差でそれらを持ち合わせていないのか、又はアップライトポジションの影響で本来のバランスを損ねているのか、広域な検証テーマを授けられて当ガレージのToDoリストには濃密な活動予定が充足されてゆく。

- 日々の通勤ライドを経た総論 -
RiGiD GARAGE所有車の中で最もスタンダードなMTB、誰にもマッチする高度な平均性能、90’sを代表する乗り味を持つ。貸出や体験試乗には一番のおすすめ車、安定したハンドリングは唐突な動きが一切なく安全安心を付帯して他人へ貸せる、特性をよく知る所有者でさえ乗る度にその恩恵を感じることができた。一部にLXパーツを用いたブレーキは性能とフィーリングが完全なXTR品質に化けた最上級の操作感!色とロゴだけを変えた共通部品では?と疑う、検証を試みたい。
乗り味はとても素晴らしい、しかしトップグレードではなくミントコンディションでもない、パブリックな普及車であり肩肘張らずに扱える気軽さが取り柄。あれこれ考えずに放置所有でも可、程々の価値感が細く長くの良い蓄積を会得する。......と未来に期待を寄せたRiGiD GARAGE謹製91RHer!

 

Specifications

Frame SPECIALIZED RockHopper Comp / 1991 / M1L 03987
Headset TANGE LEVIN 1inch
Bar Radical Components
Stem No Name 125mm
BB SHIMANO
Crank SUGINO RITCHEY 175
Rings AVITAR 11036B
Rear Derailleur SHIMANO XTR RD-M900
Front Derailleur
Shift levers SHIMANO XT SL-M740
Brake Set SHIMANO LX BR-M565 w/XTR Shoes
Brake levers SHIMANO XTR ST-M900
Front Hub SHIMANO HB-M738 (TREK950と共有)
Rear Hub SHIMANO FH-M737 (TREK950と共有)
Rims MAVIC X517 (TREK950と共有)
Tires MICHELIN Country dry2 26×2.0 (TREK950と共有)
Seat Post 3ttt
Saddle selle ITALIA TURBO     
Pedals Wellgo

 


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