1991 MONGOOSE IBOC TEAM

実測車重 11.04kg
当時価格 \98,000 (日本と世界の自転車マウンテンバイク1992より)

Overview

メタリックの入らない濁った灰色、90年代初頭の旧車が一周まわって最新のトレンドカラーに合致した。現代の「くすみ系」「セメント系」である。ロゴのグラフィックにはブルーとパープル、オレンジのアクセントが入り差し色パーツの選択にも自由度あり、なかなかいい素材の入手に成功し色の組み合わせを熟考する初期段階から趣味性が非常に高い。
大切に扱われた車両のようで乱暴なガリ傷が一切無く、ロゴのひび割れにほどよい経年感が見事な味わいを出している。これぞリアルヴィンテージ!ただ古いだけでなく32年間の年輪が美しく刻まれて佇む。

FDのワイヤーが滑車で反転し下引きのメカを上から引く構造がとても珍しい。手持ちの上級パーツも下引きなので撤去しないでそのまま使ってみよう。変速系は96以降の9速DURA-ACEを組み合わせてレストモッド的な機能向上狙い、7速から2段飛びのチューニングアップ。ロード部品の意外性とシルバーパーツの質感で演出を試みる。

この7700番DURA-ACE、いままで触れる機会が無かったので軽視をしていた。調べ始めると他のRD-7700と比べてプーリー部分が大きい、ビッグプーリーにカスタムされた改造品?と憶測し純正戻しを妄想したところでたどり着いたHPによると「GSタイプは生産時期の短い希少品」であることが判明、素晴らしい逸品であったのだ。さらに中古相場を知り2度のビックリ。知見浅くすみませんでした、大切に使わせていただきます。

塗装の状態がとても良好、自動車の純正塗りのように厚く硬い。部分的に変色があったのでピッチクリーナーやコンパウンド、ポリッシャー、リューター等を総動員し計3時間ほどの磨き作業を実施、ショップデカールの剥がし跡が見えなくなったところでゴールイン。そのデカールを調査すると現存するお店だったのであえて非公開とする。解体時に触れた各部状態ではいい仕事の納車整備をされていたことが推測される。
フレームが整ったところでしばしのデスクワーク、差し色3案からの絞り込みを熟考する。ロゴに入ったBLUE、PURPLE、ORANGE、そして手持ちパーツを有効活用するためのRED。どれも捨てがたく困惑しながら入念に立案しスモールパーツまでも手配したが、いざ組立てを開始すると全ての事前案は却下となった。他車から寸借したホイールを仮合わせしたところで進路決定!シルバーパーツにブルーの差しがいい!それがダークトーンのフレームに見事マッチ。やってみないと分からない!何事も実験体験が大事、愚僧早走、憶測だけで準備を進めても無駄が出る。この「シルバー×ブルー」を引き立てるためにフレームに沿う部分はダークパートとしてあえて彩度を下げるのだ。新規取寄せで準備したアルマイトブルーの小物類は未使用のまま保管箱へ。

ハンドル回りの種々雑多は妙にカッコいい、右ルートに集約されたケーブルも“ゴッドハンド”のエキパイみたい、配色のコントラストも期待以上、いつもとは勝手が違うポイントが数多く新しい趣味性の発見がある。ハンドルポジションも変わっていて他車とは異なるが収まりよくこれもありだ、操縦性に問題なし。

各所に改良テーマを残しながら仮完成の状態。ブラックとシルバーパーツの混在、グレード、シリーズ、年式の乱立、それでも魅了される90’sオールド!この存在感、雰囲気はどこから来るものなのか。テーマ性の統一に向けてしばらくは「妄想」が続くだろう。急いでパーフェクトを求めず、未来へのゲーム性を自ら仕込んで体験価値を整える。91 IBOCと過ごす素敵な時間と空間に感謝。

Technical notes

OS用のケーブルハンガーを1インチで使うためにスペーサーを拵(こしら)えた。

手持ちの端材32mm径のアルミパイプを切断し、C型に溝を切り、ハンマーで叩いて外径合わせ。計算上は1.6mmの厚みが必要だが材料は1.2mm、これがみごとピタリで収まり気持ちよく完結した。

ガリキズだらけのジャンクだったXTRスキュワーをサンドブラストで仕上げる。彫文字がクローズアップされて見栄え向上、サテンルックの750番ハブとも素晴らしいコーディネート。

忘備録:締め込み時にカムが砂を噛む、内部の洗浄がまだ足りていない。

シートピンは鉄のボルトにアルミナット、舐めてしまったアルミ側のねじ山をヘリサートで修復。ヘリサートキットは借り物です、Nさんありがとう。

CRITICAL RACINGの貴重なチドリはアーチワイヤー部のイモねじ頭が潰れていて取り外し不能。やむを得ずワイヤー穴をドリルで貫通させて突破。小さな1.5mmヘックスはトルク管理に間違いを犯しやすいのだろう。締めすぎるとワイヤーがバラけてしまうし、そもそもこの部分は左右バランスの保持だけであって引っ張りはなく強固な締め付けが不要だ。こんなに繊細で美しい自転車なのに過剰トルクの話しが多すぎるように思う。整備の腕前も美しく繊細でありたい。

 

 

Impression

まずは想定外の柔軟性に着目。BMXレースを連想するブランドイメージやモノステー形状からの予想とは裏腹にとても柔らかく優しく温かなマシン。スパルタンな面が一切なくカジュアルに付き合える。大きめのフレームサイズに対し90mmステムと絞り角の強いフラットバーの組み合わせで前傾も緩くなりお気軽ポジション、上体が起きた姿勢で薄く軽量なFliteサドル(当時モノ)を用いると尻が痛くなるのではと懸念したが問題は無く良好なマッチングが得られている。

やや旧式のタイヤは直進付近から浅いバンク角までナチュラルハンドリング、深いバンクではややアンダー傾向が出る、不都合ではなく慣れで問題ないレベル。細目サイズが年式によく合っていて少ないエアボリュームでも快適な乗り心地、ここにも硬さは無い。全体パーツの組み合わせがいい結果を出しており初期からまとまりの良さが際立つ。車体も小さく感じて安心できる操縦性、ワイヤーの初期延び調整もまだ終わっていない段階から「ふつう」に走れて何もなし、完成度の高さに高得点。
ブレーキの操作性が格段に良い。当ガレージ最高評価のAVID SD-2.0レバーは94 Fervorからの移植、軽く短い引きとカッチリしたダイレクト感、思い通りのコントロール性でマシンの動き全体に大きな影響力を持つ。このカンチブレーキセットは公開情報が見当たらない不明モデル、希少ヴィンテージ品の可能性にモチベーションが上がる。
疑いを持って装着したCOOL STOPのブレーキシューは見た目テカテカのカチカチで硬化したプラスチックのようだった。サンドペーパーで皮むき後に組付、時間をかけた入念なセッティングと最後にリムを脱脂して仮完成。試乗すると鳴きがまったく出ず当たり具合もすぐ立ち上がり超速合格レベル、CR17Aリムによくマッチしているようで初期セッティング一発で最良状態に到達。これはいい、まさにCOOL STOP!名前通りにワンストップでクールにゴールイン、他の車両にも用いることにしよう。

ハンドルバーの上にマウントされたサムシフターはギヤポジションによりバーから手を離すことになる。操作性の低下で結果的にシフト回数が減るが問題はない。「速度にギヤを合わせる」ではなく「ギヤに対して速度を合わす」で解決。フロントトリプルのフリクション式も理に適っており後ろギヤに合わせて微調整出来る優れた面を持つ。要は使い方の問題、そこを工夫しないで粗略に利便性を求めるか、自身に操縦技能を求めるかの違いだ。優劣を言及することでないが「自分がどうありたいか」は明確に意思がある。

事前の想定では前傾の深いオールドスーパースポーツを準備していた。個性が鋭利に特化したピンポイントスペシャルだ。完成してみるとそうはならず穏やかに全体が整った高バランス車へと到達。思い描いた山とは異なる頂へ登り予想外想定外の場所に今は居る。乗車ポジションに関してはパーツ選択や調整で様々に試すことが出来るだろう。テーマ性の統一に向けても「次の一手」が待ち遠しい。変化を楽しみながら闊歩することがインストールされたオールドマングース、更新頻度の高さが予見される。

前出の91 RHer 93 TREK 95094 Bianchiなど、下位グレードのチューニングアップがこのところ続いている。KLEIN ADROITのようなハイエンドモデルも楽しいが、伸びしろが大きく自由度のある素材にも大きな魅力がある。車に例えるとチューニングミニやカスタムビートルあたりであろうか。経済性以外にも大切な理由があって得られる趣味性にランク差は無い。とはいえ次に控えているのは90’s Oldを代表する名車、ショップとは異なり歩みの遅いRiGiD GARAGE、焦る気持ちに補正を掛けてじっくりと深く味わいながら進みたいと思う。

Appendix 230523

この活動に特化するはるか以前にも自転車は1台持ち続けていた。知人から「3万円でどう?」と持ちかけられ特別な想いもなく所有した中古のIBOCはサイズが大きかったがステム交換などとは発想もせず、その後どのように手放したかも記憶にない。写真を捜索しようやく1枚を発掘した!しかし遠影に凝視、年式グレードは解明せず。

Appendix 230621

ブレーキの素性が判明。見た目に魅せられ直感で選択したブレーキセットであったが狂いはなかった。英文表記ではPrototype Machining Joe’s Cantilever Brake。6.5mmのアルミプレートから機械切削されたMade in USAの当時ものレアパーツ。ジョーズコンポーネントは後にクリティカルレーシングに買収され同じデザインのまま継続されたとのことなのでハンガーにクリティカルのロゴが入るのは不自然ではない。テンションスプリングの仕組みもクリティカル製品と同一設計であるから合流する前からも関係が深かったのであろう。日本のカタログ誌にはジョーズやクラークケントのブランド名で掲載されており後者はクリティカルレーシングと同じ代理店の取り扱いであった。車体によく似合い時代背景も合致、時系列でのチューニング物語りまで夢想できるベストマッチな逸品。

Appendix 230718

ロゴ消しとデカール貼り

ハンドルバーのマッチングを整えた。まずは印字されていたブランドロゴの撤去、1000番の耐水ペーパーを用いて少しづつ様子を見ながら削り下地まで達しないギリギリでストップ。その後コンパウンド入りのキズ消しでよく磨く。この2工程のみ、素早い作業で素敵な無印品の完成。このままでも良いがebayで事前調達してあったオールドスクールなデカールを試す。サイズバランスと貼り位置を入念に決めて純正品のように出来上がった。見栄えパーフェクト!
車を運転していると前車のリヤガラスに貼られたステッカーが気になってしかたがない。どんな「カンバン」に敬意を持つかは各人自由、しかし傾いていたり端っこに寄り過ぎだったりでとても残念。行き交う他人のことなど関与する必要もないが、どうしても目に留まり「もっとこうすれば」と考えてしまう。感度の高すぎにも弊害有り、ノイズの混入しないパーフェクトな技能を習得したい。

Specifications

Frame MONGOOSE IBOC TEAM/ 1991 / MOK 53144
Headset TANGE
Bar UNO 6061 PG 15d bend
Stem Syncros 90mm
BB SHIMANO (Genuine parts)
Crank SHIMANO XT FC-M730 170mm
Rings SHIMANO SG 46-36-24
Rear Derailleur SHIMANO DURA-ACE RD-7700
Front Derailleur SHIMANO DURA-ACE FD-7700
Shift levers microSHIFT 3×9
Brake Set Prototype Machining Joe’s Cantilever Brake
Brake levers AVID SD-2.0
Front Hub SHIMANO HB-M750
Rear Hub SHIMANO FH-M750
Rims Sun CR17A
Tires IRC SERAC XC 26×1.95
Seat Post SHIMANO DURA-ACE 26.4mm
Saddle selle ITALIA Flite (Old model)
Pedals SHIMANO PD-M735

 


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