1991 Kestrel CSX

| 実測車重 | 10.35kg |
|---|---|
| 当時価格 | \248,000 フレームのみ (日本と世界の自転車マウンテンバイク1991より) |
Overview
「只者では無い」と当時から気にしていた。スペックや値段も知らずその画像を見ただけで直観的にお気に入りとなっていた。今回の入庫がきっかけでKestrelカーボンバイクの詳しい生い立ちを知りその素晴らしいヒストリーが若輩の直観と本能を証明してくれた。30年以上の未来へ到達した今、ようやく根源にたどり着くことができた。
フレームは全体クリーニングの後、多忙のためにしばらく寝かす。隙間時間を見つけては少しづつ準備を整え、年式合わせのテーマを定め900番XTRでのセットアップで前へ進む。ほぼ全てのパーツが既存車両や手持ち品からの流用となる。
■ST-M900改シフターレス
ブレーキレバーは使い回しこれで3台目、シフト無し900番の市販品は存在せず、折られたジャンク品からの修復〜形成〜磨きと十分に手を入れた自前作品。今回の装着にあたりさらに磨きを深めて見栄えを整えた。組み合わせるシフターは希少8速のSRAM Attack、ここだけレストモッド的チューニングアップで操作フィーリングを重視。
■Trimble ROO Bar
単品では過去にもよく見かけたROO Bar、どのような車両に合うのかさっぱり見当が付かなかったが「そういうことだったのか」と腑に落ちた。Kestrelフレームの考案者Brent Trimbleの弟Rooが作り出した逸品、ホンダと無限のような関係の血縁パーツでありKestrelに装着せずして何に使うのか?となる。車両に付いてきたものが120mm、後に100mmも入手し2通りのポジションを用意して未来の味変スタンバイ、どちらも大切に保管しよう。
■BR-M565+XTR Shoes
ブレーキも他車から流用、LXブラックとXTRグレーの組み合わせでルックス良く、シューを変えるだけでトップグレードに化ける。機能や操作に全く遜色なし。

Impression-1
試乗初期から驚きの連続だ!まさにカーボンエクスペリエンス、こんなバイク他には無い!個性の塊!そして完成度の高さまとまりの良さがピカイチ!あまりの衝撃にびっくりマークだらけの低俗作文しか出てこない。数多くの90’sを体験したつもりになっていた、そろそろやり尽くし感も出る頃と思っていた。しかしまだ知らないこんなにも素晴らしいトップランクの名車があったのだ、詳しく解説していこう。
フレームが金属でないことは乗り出し数メートルですぐに解かる、体感フィーリングがまったく違う。硬質感が無く“カンカン”言わない、シフトチェンジの音が“コン”と鈍く吸収され乗り味もその通りに素材感としての大きな特徴を持つ。ここまでカーボンが主張してくるとは!これは面白い、とても興味深い。どんなシチュエーションでもその味わいを感じ取れて「その他大勢」のバイクとは全く異なることを常に体感することができる。インパクトは強烈!設計者の明確な方向性がとてつもなく濃厚、独自のアイデンティティが全体統一されて全てのフィードバックに共通性を持ちひとつの塊となって感情に刺さってくる。すごい!これはすごいぞ!!こんな名車が90年代初期に生まれていたなんて、私のモノズキ度ランキングトップだ。独創性ではKLEIN上級機と同レベル、癖の無さ操作性の優しさはそれを超えてスーパーナチュラルフィーリング、何も考えず心の準備もなくサラッと乗って軽〜く流して普通に走る。卓越したハイパフォーマンスと日常使いを併せ持ったユーティリティはまるで空冷ポルシェのよう。900番XTRとのマッチングもパーフェクト、双方の有機的フィーリングが完全調和して全体テーマをみごとにまとめ上げている。ここは他の年式、グレードとは組み合わせ不可だろう、それほどまで相性が優れており当ガレージのタイトルに掲げたMTB Classicsを代表すべき最上級の味わいがここにある。
他車から流用した使い慣れた900番だ、ある程度の予想はしていたがここまで感覚性能を引き上げてくるとは思いもよらなかった。素晴らしい、お見事だ。ありがとうBrent Trimble!今まであなたの作品を知らずしてたいへん失礼した。30年以上も過ぎてしまったがこのページに固定できたことを誇りに思う。敬意を持って公開しよう、素敵なめぐり合わせに感謝!感謝!
Impression-2
初の出勤ライドは夜明け前の5時からスタート、11月ともなるとこの時間はまだ真っ暗の夜中であって早朝とは言えない。車は少なく人もまばら、試乗にはうってつけのとても集中できる大好きな時間帯だ。静かな路上を流しながらよく観察するとトゲトゲしさが一切無くて優しく穏やかな性格が際立つ。音も振動も小さく静寂に突き進む、アスファルトを感じない平滑感とスムーズ&シルキーなタッチはまるでカーリングの石が氷上を滑走していくような様、引力が減少したような浮遊感覚だ。
ハンドリングはとても自然でまったく違和感なし、どんなシーンでも安心できるイージー&フレンドリータイプ、後日入手した突出し100mm のROO Barに変えた影響も大きいだろう。やや近め低めのセッティングとシートも少し下げてコンパクト感を演出、スピードを上げずゆったり乗って独自の質感を味わえる部分がとても心地良い。その気になれば積極的なハイスピードまでも受け入れる幅広い適応性がありライダーに順応、使い勝手のシバリがなく思い通りに何処へでも、どんなペースでも行ける。で、その気になった先はと言うとこれがまさに真骨頂!スピードのノリ、加速感が段違いだ。当時のインプレ記事にはライトウェイトが強く主張されていて実測10.35kgのイメージ通りに大きなメリット=レスポンスの速さが確かにある。4輪2輪のチューニングに例えるとフライホイールの軽量化に同等、回転数の上昇スピード、一定の速度からその先へ上げてゆく過程が早く短くなり軽く加速していく。トルクが痩せることは無い、むしろトルクが増すと表現するほうが適切だろう。最高出力は変わらないがそこへ到達するまでの時間が短くなるのだ。アイドリングや極低速の不安定さからトルク否定の会話が「あるある」になっているのだろう。

ショックの吸収にも一貫性があってタイヤ、ホイール、フレームの総合的な協業が効いている。取り付けられた全てのパーツがベストバランスで調和しておりこの年代固有のあの有機的フィーリングが最高だ。無駄な振動や衝撃を共鳴させず極めて短時間で吸収し素早くゼロリセットへ戻す。音響技術者は残響の少ない(短い)状態を“デッド”と表現する、カーオーディオのデッドニングと同じ意味合いだ。特にシフトチェンジと駆動伝達時に感じる響き具合には深く濃い味わいがあり、このあたりが最大の個性と言える。
ここまでの作文でふと気づいた!性格やフィーリングがTREKカーボンバイクとよく似ているではないか。当ページにあるTREK 9900 OCLVを読み返すと似たような感覚のインプレッションを書いている。理由は明確だった。Brent Trimbleとチームを組みKestrelブランドを立ち上げたBevil Hogg と Tom Frenchはトレックバイシクルズを設立した初代メンバーだったのだ。
昨日乗ったのにまた乗りたくなる吸引力、明日も会えるぞと毎日ワクワク。こんな友達が欲しかった、いつまでも仲良しが続くエンドレスワールド、90’s MTBがあの頃の子供心を呼び戻してくれる。殺伐とした競争社会に私は居ない、俗世間から離れた次のレイヤーはKestrel CSXと共に実在する。
Impression-3
見落としていた、とても重要だった、このバイクの乗り味を支配する最も大きな要因はROO Barだったのだ。フレームや合算性能に気を取られていてその中間部にある伝達パーツを軽視していた。気づけばよく解かる大きな影響力仕事力、決してナンバー2ではなくTrimbleファミリー双璧のBros. 異なるブランド名称であることにも合点が行く、お互いに敬意を持って同じ土俵に同じ高さで並べたのだろう。カーボン素材のハンドルが衝撃吸収性に優れていることは他のマシンからも十分に習得していた。しかしバーだけでなくステムとコラムインナーまで一体となった構成により得られる恩恵も2倍3倍となるROO Bar。柔らかさ、心地よさ、感覚的フィーリングの立役者がここだ。フレームとのマッチングとしてはまさに心技一体、コンセプトや方向性、商品の技でこれ以上のコンビネーションはあり得ないだろう。だから完全で完璧なパッケージに仕上がり相乗的な複利効果、足し算では無く掛け算の性能が得られたのだ。すごいなあ、大発見だ、今となって見えてきた引き寄せ(られ)の本質。当時の若輩は理解力不足、30年後ようやくクリアーになったその存在理由!これだから90’s MTBは面白い、興味が尽きることはない。
Specifications
| Frame | Kestrel CSX / 1991 / 50604 |
|---|---|
| Headset | SHIMANO |
| Bar | Trimble ROO Bar 100mm / 120mm |
| Stem | |
| BB | SHIMANO |
| Crank | SHIMANO FC-M730 |
| Rings | SHIMANO 46-36-26 |
| Rear Derailleur | SHIMANO XTR RD-M900 |
| Front Derailleur | SHIMANO XTR FD-M900 |
| Shift levers | SRAM Attack 3×8 |
| Brake Set | SHIMANO BR-M565 w/XTR Shoes |
| Brake levers | SHIMANO XTR ST-M900 |
| Front Hub | SHIMANO HB-M900-F |
| Rear Hub | SHIMANO FH-M900 |
| Rims | ARAYA RM-400 PRO |
| Tires | HUTCHINSON Python AIR LIGHT 26×2.0 |
| Seat Post | THOMSON Elite |
| Saddle | selle ITALIA Flite (Old model) |
| Pedals | MKS PROMENADE |


